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「日常茶飯美 - Beautiful Life? 」展 に伊達伸明さんの「建築物ウクレレ化保存計画」が出品されることとなり、早速出かけてきました。水戸芸術館現代美術センターを訪ねるのは初めてでしたが、近代的で天井も高く広々とした素晴らしい美術館です。訪れたのは「建築物ウクレレ化保存計画コンサート」が開かれた2月16日。その日は伊達さんご自身がギター伴奏で、取り壊された建築物から製作されたウクレレをハワイアンバンド「アロハカマアイナス」のメンバーが演奏するというイベントが催されました。展示されているだけでは知ることの出来ないそれぞれのウクレレの音色を堪能することが出来ましたが、一本一本のウクレレを生み出した建築物にまつわる物語や苦心談もたいへん興味深く、暖かい人柄で優しい語り口の説明と楽しい音楽で1時間強あまりの演奏会は時間が過ぎることさえ忘れ去る豊かなコンサートでした。
ウクレレにまつわる物語のいくつかをご紹介すると、 仏間天井板を使ったウクレレでは製作中に木材に染みこんでいた線香の香りがしたり、魚屋さんの家の材料から作られたウクレレからは潮の香りがして、往事の生活が忍ばれたようです。また、材料を取るための解体時に立て付けの細工が細かくて驚くこともあるそうです。自分が建てた家が古くなったから建て替えようと家族に勧められて諦めきれないでいたが、伊達さんの一本の鋸で踏ん切りが付いたおじいさんの話など、民家の場合は家を建て替える時期が世帯主が亡くなった場合や娘が嫁ぐなど、それぞれの人生の大きな節目に立ち会うこととなりこれらのウクレレすべてに様々な物語が秘められています。おもしろいことに、出来上がったウクレレを受け取った依頼者の方々が皆さんウクレレを練習し始めるそうです。
このウクレレたちは建築物の保存というだけでなく、ウクレレとなってから弾き継がれ、弾きキズや汚れなどが新たな歴史を刻んでいくことも楽しみで、いつか「持ち主バンド」が出来ればおもしろいなあと思っています。
私の中ではどれも優劣つけがたいのですが、先日の京都の展覧会に来られた方々の感想をうかがっていると、音楽室の黒板をそのままボディ材に使った春日丘高校ウクレレやふすまの引手(丸くてちょっとへっこんでいる部分)のまん中をくり抜いてふすまごと天板に使った小川低ウクレレ(ヘッドは「ごみ当番」の回覧木札)などに注目が集まっていたようです。
と伊達さんは語っておられました。
展示は、壁全面 を白く塗り、展示スペースを黒く塗り分けてあります。そこにアームを出しウクレレを吊り下げるのですが、鏡を設置してウクレレの裏側も見ることができます。更に下段に棚を張りウクレレのもとになった建築物の在りし日の姿とウクレレ製作に使用された部分の写真、制作にあたる逸話を展示してあります。
ウクレレ作製でのご苦心は、ご依頼者の思い出の残る部分を材料としますので、表面 を削ることができないことだそうです。表板の場合は様々な材質で厚みのある板を裏側から必要な厚みまで削りだし、表板が平坦ではない場合などは厚みを均一にするため形状に合わせて凹凸 を削っていくなどの細工も施されています。側板は木材を曲げるための加湿・加熱も裏側のみしか出来ません。そのため、くびれたギターのような形ではなく枇杷のような形にしてあるそうです。 伊達さんの作品でいつも驚かされるのは、ウクレレそれぞれにおもしろい工夫がされており、演奏家のゴンチチさんが音色のすばらしさに是非欲しいと伊達さんにおねだりした初回展覧会から登場している裏板にガラスを張ったウクレレや、ヘッドに引戸の取っ手が付いていたり、反っくり返っていたり、カギが付いていたり、サウンドホールもフスマの金具、障子の切り紙、花模様の装飾板からのハート形のくり抜きなど、ご依頼者の思い出をもっとも大切にされています。
しかし、これらのウクレレの物語のなかには自分の原体験がオーバラップするものもあり、そういえば自分の家にもこんなキズがあったなあとか、子供の頃怖いテレビを見た後寝床で天井のシミが気味悪く見えたりしたそんな体験までもが蘇り、遠い過去に見た古い建造物の手すりの形の見覚えや引戸の手応えなど、あたかも自分の体験であったような不思議な既視感にとらわれたりします。
作り手の優しさに包まれた、自由な発想と楽器作りの技術はいつまで見ていても見飽きることがありません。
ウクレレから広がる新世界を見る想いです。
= 出品作品紹介 = 2002/03/01